前回は京都地裁本庁の最先の賃借権がついている競売物件の入札シミュレーションを行いました。全体の入札件数を見ても数が非常に少ないですね。
私自身大阪地裁本庁がメインで入札していたので大阪地裁本庁の入札数が少なく感じていたのでさらに少ない印象です。
色々とみてみて収益物件として考えられる入札案件がありましたので、今回はそちらを利用して入札シミュレーションをしてみたいと思います。
今回のサンプルは、
京都地裁本庁
開札期日が令和2年4月23日
■事件番号|令和1年(ケ)第202号
■売却基準価額|7,540,000円
■買受申出保証額|1,508,000円
■買受可能価額|6,032,000円
では、3点セットを見ていきましょう。
3点セットで順番に目にするところからご紹介しますね。
①期間入札の公告(表紙)
■固定資産税:130,603円
■都市計画税:32,724円
合計:163,327円
②物件明細書
3.買受人が負担することとなる他人の権利
なし
4.物件の占有状況等に関する特記事項
(1)2階のうち、事務所部分を除く住居部分(201号室)につき、「C」が占有している。同人の賃借権は抵当権に後れる。代金納付日から6か月間、明け渡しが猶予される。
(2)3階(301号室)につき、「D」が占有している。同人の賃借権は抵当権に後れる。代金納付日から6か月間、明け渡しが猶予される。
(3)上記(1)及び(2)を除いた部分につき、本件所有者が占有している。
※所有者「A」「B」の共有です。持ち分は2分の1ずつです。
③現況調査報告書
■関係人の陳述
※所有者2名連名の回答
1.201号室は「C」に賃貸している。保証金3万円は返還しない約束。
2.301号室は「D」に賃貸している。
※所有者Aの回答
1.賃貸していない建物には所有者2名が居住している。
※所有者Bの回答
1.賃貸していない建物には所有者2名が居住している。
2.4階洋室南側、5階各和室南側に雨漏りがあり。
※.執行官の調査の経過
令和元年11月6日~同年12月5日
■占有者及び占有権限
★賃借人★(201号室)
・占有開始:平成31年3月30日
・現在の契約:平成31年3月15日~平成33年2月末
・賃料月額3万円
・保証金3万円(返還無し)
★賃借人★(301号室)
・占有開始:平成30年7月30日
・現在の契約:平成30年7月30日~期限定め無し
・賃料月額6万円
■執行官の意見
1.昭和61年建築の鉄骨造建物であり、被覆耐火材としてアスベストが使用されている可能性が高い。目視できなかったため使用の有無は不明。
2.北東角の看板に記載されている団体の占有の徴憑は、建物内部に存在しなかった。
看板が残っているだけで、看板記載の団体の占有はないと認定した。
3.各賃借人占有者に対し照会書を発送したが、期限までに回答がなかった。
④室内の写真
写真を見る限りとにかく荷物の量が凄いです。
そして、個人的にびっくりしたのが、賃借人が立ち合いなしで室内の写真が撮られていることです。正直入札者側からみると中の様子が見れるのはありがたいですが。。
賃借人さんのお部屋の荷物もそれなりにありますが、それは賃借人が運び出してくれると思いますので大丈夫かと。
後は、室内の雨漏りや室内の手入れ状況など、かなりお費用がかかりそうです。
特に何かややこしさを感じるようなものも確認はできませんでした。
⑤評価書
■地下鉄烏丸線「北大路」駅の西方・道路距離約2.4Km
最寄バス停「金閣寺前」北東方・約270m(徒歩4分)
■市街化区域
■第2種中高層住居専用地域
■建蔽率60%/容積率200%
■準防火地域
■その他規制
①15m第1種高度地区
②旧市街地型美観地区
③遠景デザイン保全区域、近景デザイン保全区域、事前協議区域
■間口約8m、奥行き約10m不整形地
■接面道路
①北側幅員約6m(42条1項1号道路)
②東側幅員約3.8m(42条1項5号道路)私道
※セットバックの必要性があるかもしれません。
■築年月:昭和61年7月26日
■構造:鉄骨・鉄筋コンクリート造5階建て
■経過年数:約33年(経済的耐用年数はほぼ満了している)
■エレベーター無し。駐輪場あり、駐車場1台あり
■現況用途:事務所・居宅
■違反建築物
■5階部分の床面積が登記簿と異なる(未登記の増築が認められる)
■評価人の評価額1539万円
以上が3点セットに掲載されいる内容の要約です。
では、3点セットでわかった収支を見ていきましょう。
〇収入
1.賃料3万円+6万円=9万円÷2=4.5万円(一室平均)
4.5万円×4室(5階部分は除いて計算)=18万円
18万円×12ヵ月=216万円(年間)
〇支出
今回は支出がわかっているのが固定資産税、都市計画税のみの為、表面利回りでの計算にとどめておきます。
買受可能価額を基に表面利回りを算出すると
216万円÷6,032,000円×100=35.80%
これだけ利回りが出るならいいですね。しかし、忘れてはいけないのが、取得時にかかる経費と改装費用です。
大雑把な計算で600万円と仮定すると買受可能価額+600万=約1200万円
216万円÷1200万円÷100=18%
利回り16%で逆算すると
216万円÷16%=1350万円
1350万円ー600万円(改装費等の経費)=750万円
以上から私の入札見込みは750万円となりました。
売却基準価額が754万円なので、売却基準価額で札が集まるのではないでしょうか?
後は、改装費をどれだけ抑えられるかでもう少し入札額の伸びしろはありそうですが。。
個人的入札予測額|750万円
市場入札観測予測|1000万円
初めて入札をされる方には色々と手続きが大変かと思うので、入札されるのは難しい案件ですね。
ただその分入札件数は少ないかもしれません。
地方変われば入札者の顔ぶれも変わりますので、今回の予測等は大阪地裁本庁での入札経験からシミュレーションをしています。
こちらも結果がどうなるのか?
またご報告させて頂きます!
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