前回の記事ででてきました、事件番号のお話です。
一般的な金融機関からの競売申し立ての場合は(ケ)で処理されていて、そうでない時には(ヌ)が登場したり。
私自身の経験では競売の(ヌ)の事件での落札は1件しか取り扱いがありませんでした。
大阪地裁本庁ではしばしば(ヌ)事件の競売はでてくるのですが、参加しても落札ができないことが多いため1件どまりです。
その時の落札後の占有者への交渉を振り返ってみたいと思います。
事件番号(ヌ)の申立人は誰か?
私が経験した時の申立人は、前所有者(代理人で弁護士)からの申し立てでした。
いつものごとく、
開札結果をうけて、裁判所へ出向き「売却許可決定の写し」をもらい受ける際に、入札の全記録の閲覧をしました。
そこにはテレビで聞く、見るような申し立てが書かれていました。
■前所有者は騙された。
騙されたと聞くと「詐欺」と思ってしまうのですが、それは新興宗教の教祖様に対しての貢ぎ物でした。
書面を読んでいくと
前所有者がその新興宗教の教祖と出会い、様々な教えを受けていく道中で自分が持っている私財を教祖様へ貢いでいくストーリーが書かれていました。
テレビでは見たことあるけど、本当に現実に自分が目にする機会があるとは思ってもいませんでした。
ちなみに、前所有者と記載しているので、次の所有者は「教祖様」です。
テレビの世界では恐らくここまでの流れやと思うのですが、この教祖様は一味違いました。
それは、教祖名義になった後に、自分の娘へ贈与していたんです。
所有者の流れが
前所有者(競売申立人)→教祖様→現所有者(教祖の娘)
こんな感じで名義を移していたんです。
あきらかに作為を感じますよね。
そして、この競売に申し立てされる前に、教祖娘への名義変更は認められないとして裁判を起こして、勝訴していました。
なので、競売上での現所有者は「教祖」でした。
話は戻りまして、ストーリーの続きですが、前所有者は自分が洗脳されていた(マインドコントロール)されていたことを理解し、その洗脳から解き放たれ正常な考えを持てるようになったと。
そして、教祖に搾取された自身の財産を戻してもらうために競売の申し立てを行ったと記録に鮮明に書かれていました。
事件番号(ケ)の申し立てを見ると形式的な記録しか残っていません。
例えば、金融機関からの申し立ての場合、
①銀行独自の連絡やり取りしたけど、債務者が返済できない。
②銀行のバックにいてる保証会社から債務者へ連絡のあたりをつけていく。
③行方を探したけど見つからなかった。
概ねこの3点の流れで競売になっています。
しかし、今回のケースは閲覧している私自身がドキドキしました。
今住んでいるのは?
実際に落札が終わり、売却許可決定の写しをもらい、いざ現地へ
3点セットの資料では教祖の娘が住んでいるとなっていました。
室内写真からもややこしそうな物は見当たらなかったので、大丈夫だろうと思っていました。
①現地にてインターホンで呼び出し
→呼び出しを押しても返事はありません。
本当にいない場合と居留守の場合があるので何とも言えないのですが、今回のケースは不在だったと思います。
②不在のための通知書を置いて帰る。
→用意していった手紙をポストへ投函して帰り、連絡が入るのを待ちます。
これでも連絡が来ることは少ないです。
※この時に家に帰ってきてる痕跡を確認するため、電気、ガスなどのメーターの数字を控えて帰ります。
③3日ほど経過後、再度訪問。
→今回も不在であることを考えて現地へ手紙持参で行きます。今回はポストでなく、扉へ直接テープで貼り付けます。
否が応でも手紙が目に入るので手に取って中を見てもらえるとレスポンス率はアップします。
※前回確認したメーターの数字と比較します。
数字が変わっていれば出入りがあることが確認できますので、次の対策は電話を待つか、訪問時間の時間帯を変えての訪問、もしくは張り込みです。
④さらに数日待ちましたが返事も来ず、再度現地へ
→手紙は扉から剥がれてなくなっていました。なので、出入りはあるけども無視しているケースです。
こうなると長期戦を覚悟しなければなりません。
※今回の競売物件は区分マンションでした。古い建物なので、玄関前の廊下に所有者専用のトランクルームが1戸に1つついていました。
そ~とトランクルームを開けてみると扉が開きました。
中に住んでいる方の手掛かりとなるものがないかと物色をしていた時、部屋のカギらしきものを発見しました。
部屋のカギと一致するのか?
こちらもそ~とカギ穴に差し込むと合致しました。
ここから先は個人的責任が及ぶ世界です。
⑤どんな手法を使っても連絡がつかない。
→今回は早々と強制執行の申し立て手続きに入りました。
理由は、いたずらに時間が延びるのも嫌ですし、強制執行の申し立てを行うことでアクションがある方もいてるからです。
⑥強制執行申し立て後どうなった?
→申し立ての相手方は「教祖様」です。教祖様の住所へ手紙が届くと、すぐに書面での返答が入りました。
いついつまでに荷物を引き払い退去するとの事でした。
こちらから退去の覚書を郵送し、その書面も手元へ返送されてきました。
後は引越し完了後のカギの受け渡しができればミッション終了です。
鍵の引渡しは例のトランクルームを使用することにしました。
退去完了後にトランクルームへ鍵を置いて出て行って下さいとお願いしたら、きっちりと鍵を置いて退去されていました。
最初の出だしの記録を見ていると、なかなか一筋縄で終えることができず、かなり揉めるか長期戦になることも覚悟していたのですが、強制執行の申し立てで即時解決となりました。
最後まで占有者の方とお会いできなかったのは残念ですが、余計な心配事も抱えることなく終えられてほっとしました。
Comments